全体像:分野はどうつながっているか

一つの Web サービスは、役割の違う部品を組み合わせてできている。図の箱が分野、矢印が「頼む・渡す・支える」の関係。

ソフトウェアを構成する12の分野と、そのつながり 利用者 API 読み書き 上の3つは、この言語で書く 載せる 届ける 見守る 入口で守る 周辺:コードを書かずにつなぐ・繰り返す 利用:溜まったデータを使う 画面・フロントエンド 見せる サーバー・API 決める・返す データの保存 覚える 言語・実行環境 書くための言葉 実行基盤・ホスティング 動かす場所 開発基盤・CI/CD 届ける 監視・可観測性 見守る 認証・セキュリティ 守る 自動化・連携 繰り返す ノーコード・SaaS 書かずに済ます データ処理・分析 集計する AI・機械学習 生成・予測
上の段が「利用者に見えて、動いている部分」。下へ行くほど、それを支える仕組みになる。箱を押すと分野の解説へ移る。

図の読み方

上の段が、利用者から見えて動いている部分。利用者はブラウザで画面を見る。画面は自分ではデータを持たず、サーバーに API で頼む。サーバーはデータの保存場所を読み書きして、結果を画面に返す。この3つで「動くもの」ができる。

その3つは、どれかの言語で書かれている。画面は JavaScript(TypeScript)、サーバーは Python や Go や TypeScript。言語を1つ決めると、その言語で使える道具が決まる。

書いたものは、動かす場所に載せて初めて他人が使える。自分のパソコンの外にある、常に電源の入ったサーバーに置く。ファイルを置くだけの場所から、常駐するサーバー、呼ばれたときだけ動く関数まで種類がある。

載せた後を支える3つ。変更を壊さず届ける開発基盤、動いているかを見る監視、誰が入れるかを決める認証。個人の練習では後回しにしがちだが、公開した瞬間に必要になる。

周辺と利用。自動化ノーコードは、上の仕組みをコードを書かずに(または最小限で)つなぐ手段。データ処理AIは、溜まったデータを使う側で、他の分野の上に載る。

学ぶ順番

番号は推奨の順序。1〜4 で「動くもの」が作れ、5 で公開でき、6〜8 で公開後に困らなくなる。9 以降は必要になったときでよい。

分野 何をする分野か 最初に触るなら
01 言語・実行環境 プログラムを書くための「言葉」と、それを動かす仕組み Python
書いて動かすまでの距離が最短で、データ処理・自動化・AI の学習資料が最も多い。画面を作りたい場合だけ TypeScript から入る。
02 画面・フロントエンド 利用者が見て、触る画面をつくる。ブラウザの中で動く部分 Astro
HTML と Markdown から始められ、JavaScript を書かなくてもサイトを公開できる。動く画面が必要になった時点で React を足せばよい。
03 サーバー・API 画面の裏側で、頼まれた処理をしてデータを返す係 Supabase
データベース・認証・API が最初から揃っていて、サーバーを書かずに「裏側」の役割を体感できる。仕組みが分かったら FastAPI で自分で書く。
04 データの保存 データをなくさず置いておく場所。形(表・文書・ファイル)で種類が分かれる SQLite
インストール不要の1ファイルで SQL を学べる。複数の人やプログラムが同時に使う段階になったら PostgreSQL に移る。
05 実行基盤・ホスティング 書いたコードを、自分のパソコンの外で動かし続ける場所 GitHub Pages
静的サイトを無料で公開でき、「公開する」とはファイルを誰かのサーバーに置くことだと最短で分かる。サーバーが必要になったら Render や AWS Lambda に進む。
06 開発基盤・CI/CD コードの変更を、壊さずに本番へ届ける仕組み Git
すべての開発の前提。履歴を残し、失敗したら戻せる状態を作ってから他の分野を学ぶ。次に GitHub、その次に GitHub Actions の順。
07 監視・可観測性 動いているものの様子を知り、壊れたら気づく Sentry
数行の設定でアプリのエラーが自動で集まり、「動いているつもり」が可視化される体験が得られる。
08 認証・セキュリティ 誰がアクセスできるかを決め、守る Clerk
数十行でログインが付き、「認証は自分で作らない」という原則を体で覚えられる。
09 自動化・連携 決まった作業を、人手なしで繰り返す Google Apps Script
スプレッドシートを自動で動かす体験が最短で得られ、「定期実行」「トリガー」という考え方が身につく。
10 ノーコード・SaaS コードを書かずに済ませる選択肢 Zapier
つなぐだけで動くので「入力 → 処理 → 出力」という流れが目に見える。回数課金に当たったら n8n やコードへ移る。
11 データ処理・分析 溜まったデータを集計・変換・可視化する pandas
CSV を読んで集計する最短の道具で、学習資料が最も多い。データがメモリに乗らなくなったら DuckDB に進む。
12 AI・機械学習 文章の生成・要約・分類や、予測をアプリに組み込む Claude API(Anthropic)
数行のリクエストで結果が返り、料金・コンテキスト長・レート制限という「制約の考え方」まで一度に学べる。

つながりの一覧

図の矢印を文章にしたもの。「A → B」は A から見た B との関係。

分野 つながる先 どうつながるか
言語・実行環境 画面・フロントエンド 画面は JavaScript(TypeScript)で書く。ブラウザが動かせる言語はこれだけなので、画面を作るなら避けて通れない
サーバー・API サーバー側の処理は Python・Go・TypeScript などで書く。言語を決めると、使えるフレームワークが決まる
データ処理・分析 集計や分析のライブラリは Python に集中している。データを扱うなら Python が近道
画面・フロントエンド サーバー・API 画面は自分ではデータを持たない。API を呼んでデータを受け取り、表示する
実行基盤・ホスティング 作った画面は HTML・CSS・JavaScript のファイルになる。それを配信場所に置いて初めて他人が見られる
認証・セキュリティ ログイン画面はここにあるが、「本人かどうか」の判断はサーバー側が行う。画面は判断しない
サーバー・API データの保存 データを保存し、取り出すのはサーバーの仕事。画面から保存場所に直接触らせない
画面・フロントエンド 画面に対して API(決まった形の窓口)を用意し、頼まれたデータを返す
認証・セキュリティ 「本人か」「この操作をしてよいか」の判断はここで行う
実行基盤・ホスティング サーバーは動かし続ける場所が要る。自前で持つか、BaaS に任せるかを選ぶ
データの保存 サーバー・API 読み書きの主体はサーバー。画面から直接は触らない
データ処理・分析 溜まったデータを集計・分析するとき、ここが出発点になる
実行基盤・ホスティング データベースを自分で運用するか、運用込みで借りる(マネージド)かを選ぶ
実行基盤・ホスティング 開発基盤・CI/CD 変更をここへ届けるのが開発基盤(CI/CD)の仕事
監視・可観測性 載せたものが正しく動いているかを見るのが監視の仕事
サーバー・API 常時動くサーバーか、呼ばれたときだけ動く関数かで、置き方と料金が変わる
自動化・連携 定期的に動かす処理も、どこかの基盤の上で動く
開発基盤・CI/CD 実行基盤・ホスティング 届け先。検証(CI)に通った変更を、実行基盤へ配信(CD)する
監視・可観測性 配信したあとに壊れていないかを見る監視と、いつも組で使う
自動化・連携 CI の定期実行は、テスト以外の自動化にも使える
監視・可観測性 実行基盤・ホスティング 監視の対象は、実行基盤の上で動いているもの
サーバー・API 不具合の多くはサーバー側で起きる。例外を集めて原因をたどる
開発基盤・CI/CD 配信のたびに「壊れていないか」を見る習慣と組で使う
認証・セキュリティ サーバー・API 「本人か」「この操作をしてよいか」の判断はサーバー側で行う
画面・フロントエンド ログイン画面は画面側にあるが、判断はしない。トークンを預かって渡すだけ
実行基盤・ホスティング 公開面への攻撃(大量アクセス、ボット)は基盤の手前で止める
自動化・連携 実行基盤・ホスティング 定期的に動かす処理も、どこかの基盤の上で動く。実行時間の上限はそこで決まる
ノーコード・SaaS コードを書かない自動化は、ノーコードの領域と重なる
開発基盤・CI/CD CI の定期実行(スケジュール)も自動化の一種として使える
ノーコード・SaaS 自動化・連携 サービス同士をつなぐ自動化は、ノーコードがいちばん得意な領域
データの保存 Airtable のような「表の形の保存場所」は、データベースの入口になる
画面・フロントエンド Notion の公開ページのように、画面を作らずに情報を公開できる
データ処理・分析 データの保存 処理するデータの出どころ。データベースやファイルから読み出す
言語・実行環境 道具は Python のライブラリに集中している
AI・機械学習 学習や推論に渡すデータを整えるのはこの分野の仕事
AI・機械学習 サーバー・API API の呼び出しはサーバー側から行う。鍵を画面に出さない
データ処理・分析 渡すデータを整えるのはデータ処理の仕事
データの保存 関連する文書を探すベクトル検索は、データベースの機能として提供される
実行基盤・ホスティング 手元でモデルを動かすなら、GPU とメモリという基盤の制約が先に立つ